「言っとくが、この国の酒は良く効くぞ?
タイキぶっ倒れるなよ。
ミチロウもどうじゃ?」
「じゃあ少しだけ。
我が家で晩酌は久し振りだなぁ、ワハハッ!」
「愉快な客人が居るんじゃ、たまにはいいじゃろーて、ブワハハッ!」
「おっ!
この生ハムすげーうめぇ」
おかしいな…
アルコールを好まず、知的趣味の時間や、意味のある語らいを大切にしたいと言っていた筈のこの家族が…
「くわっ…キッツイなこの酒…喉がカーッてなる」
「ブワハハッ!何舐める様に飲んでんじゃ。
ワシを見ろ、こうやって一気に流し込んで……
うっゲホッ!ウエッホゴホゴホ…」
「あ〜あんたはもう、すぐいい格好しようとするから…歳を考えて下さいよ!」
「あ〜酔いが回ってきた〜
アーニャ、君はどうしてそんなにも美しいんだ…愛してるよ〜」
「はいはい、ミチロウは酔っても酔わなくても、言ってる事は変わらないわね」
「愛して〜愛して〜愛してるヨ〜ロレイヒ〜!」
「やっぱり酔うと変わるわね……」
いつもは穏やかで、秩序あるヴェデルニコフ家の食卓の雰囲気が…
大樹が来た事で一変してしまった。
今まで見たことのないイワンさんや我妻さんの酔っ払い姿に驚き、
彼らにいい表情をさせている大樹に、幾らかの嫉妬を感じてしまった。
立ち尽くす俺に
「リュウもおいで」とアナスタシアさんが呼んでくれて、その声でハッと我に返った。
「リュウ」と皆が口々に俺の名を呼び、手招きしてくれる。
キッチンで使っていた椅子を一脚追加して、いつもより狭い食卓を皆で囲む。
「流星は飲まねぇのか?」
「俺は医者に止められてるから…」
「そうか、なら生ハム食え。
うめぇぞこれ」
大樹がクラッカーに乗せた生ハムを俺の口に突っ込むから、
折角塞がっていた傷口がまた開いてしまう。
「痛いから止めろ」と、ついロシア語で言ってしまい、
「日本語喋れ」と頭を叩かれる。
二ヵ国語が混ざり合い、会話が噛み合っているのかも良く分からなくなってきたが……
皆の表情は明るく笑い声が絶えなかった。


