「君の小さく朧げな痕跡に、あの子はちゃんと気付いてくれた。
君達の現状を何とかしたかった訳だが…
まぁ、結果として、君との約束を違えた事については謝るよ。ごめんな」
「謝らないで下さい…感謝してるんです。
我妻さん…ありがとう。
あなたのお陰でやっと目が覚めた気分です」
「僕じゃない。大樹君のお陰だろ?
彼は凄いな。
押して駄目なら引いてみなって言うけど、リュウに関しては押した方が…
いや、パンチの方が効果的みたいだな。
まさに荒療治!ワハハハッ!」
荒療治…そうかも知れない。
感謝している…大樹にも…我妻さんにも…
それと、強く待ち続けてくれている紫にも……
◇
その後は我妻さんと二人で、割れた額縁の破片を片付けてからリビングに戻った。
先程大樹について
「凄いな」と言っていた我妻さん、
食卓テーブルで食事中の彼を見て
「色々と凄いな…」と、また違う意味で感心し始めた。
大樹は食卓の俺の椅子に座り、夕食の残りのビーフストロガノフを食べていた。
彼を囲むのは俺と我妻さん以外の3人。
イワンさんタマラさんが大樹に色々と話し掛け、
アナスタシアさんが通訳に忙しそうだった。
「しっかし旨そうに食べるなぁ。
若者はそうでなけりゃいかん。
ほらタイキ、パンもまだあるぞ?いっぱい食べるといい」
「おう、ジイサンすまねぇな。
けどよ、俺、パンより米食いてーんだけど。
この汁ご飯に掛けて食いてぇ。
ここん家、米ねーの?」
「タマラ、今からご飯炊けないのか?」
「すぐには出来ないよ、男は何にも分かってないねぇ。
タイキが来るって分かっていたら、用意しておいたけど…
日本人は何でもライスと一緒に食べたいんだねぇ。
そうすると、リュウもミチロウも、パンの方がいいって言うのは何故だろうねぇ」
「バアサンそれ嘘だぞ。
あいつ嘘つきだから騙されてんな。
流星は米派だ。紫から聞いた事ある。
まぁ、あいつの食い物の事はどーでもいいけどよ、俺は米が食いてぇ。
この国に来てから、米食ってねーんだよ」


