ラベンダーと星空の約束

 


紫を想い項垂れる。

彼女を想い心を鎖す。



そんな俺に、今日何度目かの
「バカじゃねーの」との呆れ声が降り掛かる。



何とでも言え…

自分でもこの心の弱さに辟易(ヘキエキ)してるんだ。

それでもどうにも出来ない。

紫の涙が…頭から離れない……





床の上には、割れた額縁の破片がまだ散乱していた。



幸いな事に破損したのは額縁だけで、風景画本体は無傷な様だ。



大樹から顔を背け、右横に落ちているその絵を何とは無しに眺めていた。



針葉樹と広葉樹が混ざり合う、混合樹林の森の絵。



油画なのに色彩には透明感があり、新緑の初々しい緑を良く表していると思う。



構成している色の4分の3が緑色系。

残りの色は、木々の間から見える空の水色と幹と枝の茶色。



それから……

薄紫色の点が、三箇所描かれている事に気付いた。



今まで玄関を入る度に、ドアの真正面に掛けられたこの絵を目にしてきたのだが…

その紫色にこれまで気付けなかった。



森の下草に紛れて咲く紫色の花か。

ラベンダーではない様だ。



それに注意を向けていると、左横で大樹が立ち上がる気配がした。



彼はズボンのポケットに両手を突っ込みながら、冷たい視線で俺を見下ろしている。



ちらりと見上げ、再び視線を風景画に戻す。




「何いじけてんだよ…面倒臭ぇ野郎だな」



「そうだね…」




呆れ声におざなりな返答をしながら、紫色の点が何の花なのかと考えていた。



はっきりと描かれている訳じゃないから、花弁の形が分からないが…

スミレかそれとも桔梗(キキョウ)の一種か……




「めそめそウジウジしやがってよ」



「そうだね…」





スミレ…桔梗……

でもな、春の混合樹林にそれらの花は自生する物だろうか…



違うか…もっと野草っぽい花の様な気もする。

そうすると紫露草の方が適当か……