左側から刺すような鋭い視線を感じるが、その目を直視するには心が痛すぎて…
ただ深い溜息をつき、黙って項垂(ウナダ)れていた。
目を瞑ると見えてくるのは紫の姿。
こうして紫を想い浮かべる時、彼女はいつでも笑ってくれた。
時には柏寮の110号室で…
時には白樺の木の下で…
想い出の中の彼女は、いつも笑っていた。
しかし…今日は笑ってくれない。
目を閉じ瞼の裏に描き出した紫は、ライトアップされたラベンダー畑の中に佇み、紺碧の夜空を見上げていた。
宵闇の濃い時刻に南中しているのは蠍座。
その中心に瞬くのは赤く輝く蠍の心臓、アンタレス。
その星を見詰め彼女は
「流星…」と俺の名を呟いた…
星空を映す漆黒の瞳から、真珠の様な涙が一粒………
…こぼれて落ちた………―――――
大樹の言葉から勝手に想像を広げ、描き出してしまった映像に…
愚かにも衝撃を味わい、心臓が強く収縮して、壊れそうに悲鳴を上げていた。
紫は…今でも俺を想っている。
別れて3年経った今でも…俺を想い…帰りをひたすらに待ち続けている。
それが…悲しい現実だった……
何故……
「なぜ忘れてくれない…
3年も時が過ぎたのに、なぜ忘れてくれない……
傍にいたら駄目なんだよ…
命の期限を知れば、紫は恐怖に怯える事だろう。
いつか彼女の笑顔を奪ってしまうだろう。
だから俺は……」
どうしたいいのか、分からなくなった。
離れていては紫を苦しめる……
だが、共に生きる道を選ぶなら、自らの死をもって彼女の笑顔を奪う事になる……
分からない。
どんな結末を描くのが彼女の為になるのか……
苦渋に呻いて顔を歪めた。


