ラベンダーと星空の約束

 


玄関前の廊下に二人、壁にもたれ並んで座っていた。



玄関の薄明かり、寒い廊下。

家中がやけに静かで、小さな溜息さえも誇張されて響いてしまう。



落ち着かないこの心音も…耳に煩い。



何度目かの溜息を漏らすと

「バカじゃねーの…」
と大樹に鼻で笑われる。



大樹は、紫と幼なじみであり弟の様な関係を、今も続けているらしい…



俺が消えれば大樹をパートナーに選ぶ筈…

紫と大樹は新しい関係を築いている筈…

そう考えてきたが…それは正しくは無かった。



紫の心は…俺が『そうだと困る』と考えていた通りになって………



掠れる声で恐る恐る聞いた。




「…紫は…今でも俺を…」




それだと困るんだ…

今でも俺を想っていると言う事は、紫がこの3年間、ずっと苦しんでいた事になるじゃないか…



困るんだ…それなのに紫は…………




「あ゙? 紫がもうてめぇの事なんか、忘れてると思ってたのか?」



「………」





そうあって欲しいと思っていたんだ。

願っていたんだ。



紫の笑顔を守りたくて離れたのに…苦しみを与えては意味がない。



初めは別れに傷付いたとしても、富良野の皆が癒してくれると……



忙しい日々と季節の移り変わりに、俺への想いは薄れ行き…

彼女の中の俺の存在は、やがて過去の産物となり果てるであろうと…



そして、ラベンダー畑の中で笑う彼女の隣には大樹がいて……



そう願っていたんだ。
それが最良の結末なのだと信じていたんだ。



だが…そうならなかった事は、今更大樹に聞き返さなくても分かっている。



大樹の言葉、苦しい涙を見れば…今の紫は笑っていないと言っている様な物だから……




「めでてぇ奴だな、てめぇは。

一人で全ての苦しみを背負ったつもりでいたのかよ。

バカじゃねーの?


紫はな…待ってんだよ。

毎晩星空眺めて…アホみてぇに、てめぇを待ち続けてんだ」