動揺と未だ収まらない驚きの中、警官と記者の親子は終始笑顔で…
ヴェデルニコフ家の人々は、廊下の角から俺達の様子を興味津々に覗き見て…
我妻さんだけは
「そうかぁ…」と、全てを理解した様に一人呟いていた。
警官が誰に言うともなく話し始めた。
「やれやれ、これで一件落着だな。
初めは言葉が通じなくてどうしようかと思ったが、何とか言いたい事を理解できて良かった。
人助けは実に気持ちがいい!
いや〜年の締め括りにいい仕事が出来たってもんだなぁ、ハッハッハッ!」
「オッサン、色々手間かけたな。マジ助かった。
後、泊めてくれてありがとな」
「警察官として、困っている人を助けるのは当然さ。
それじゃあ俺達は帰るぞ。
後は兄弟仲良く語らうがいい」
ロシア語しか分からないロシア人と、
日本語しか分からない日本人。
二人の会話が噛み合っている気がするのは…偶然には違いない。
己の使命感を満たし達成感を味わう警官と、取材を果たし満足した様子の息子は、
大樹の肩をポンッと叩くと笑顔で帰って行った。
恐らく数日後のどこかの雑誌か地方紙に、
『感動!遥か4500マイルの距離を越え、再会を果たした日本人兄弟!
協力したのは市民の味方、地元警察!』
長い見出しの付いた、間違いだらけの記事が掲載される事だろう。
彼らが帰って玄関先が静かになると、驚きの波も漸く鎮まり、言葉も思考力も正常に機能し始めた。
大樹が来たと言う事は…
紫にも、居場所が割れてしまったと考えていいだろう。
紫は何を思い、大樹を一人でここに来させた?
彼女なら自分で直接会いに来そうな物だが…
いや、それだと俺に逢いたいと思っている事が前提になってしまい、困った事態になる。
それなら…
逢いたいと思っていないが、何かを伝えたくて大樹を寄越したとか…?
これも何か違う…
逢いたくないのに、何を伝えたいと言うんだ。


