食卓の椅子に座り俯いて、膝の間に置いたスマホの画面を見続けていた。
やがて画面が暗くなり、紫の笑顔も消えてしまう。
それと同時に「カシャリ」とカメラのシャッター音が聴こえた。
驚いて顔を左に向けると、カメラを顔の横にずらして我妻さんが俺を見ていた。
「あ…困ります。
俺を撮るのは止めて下さい」
「何故?僕があの子のPCアドレスを知っているからかい?」
「………」
「そう言えば、最近彼女からメールが来てないなぁ。
最後にやり取りしたのは2ヶ月前かな?
そろそろメールが来そうな頃なんだけどな」
その言葉に驚き、勢い良く立ち上がる。
その拍子に椅子がガタンと後ろに倒れ、膝の間に置いていたスマホは床に転がった。
暗転したディスプレイに、再び笑顔の紫が浮かび上がった。
「まさか…
紫に…俺の居場所を…?」
彼の腕を強く掴み疑いの目を向けると、彼はやんわりと首を横に振った。
「君の名前は一文字も出しちゃいないさ。
時々やり取りしているメールは、写真についての質問がほとんどだ。
今見せてあげるから待ってな」
一旦アナスタシアさんの書斎に戻り、彼は自分専用のノートパソコンを持ってきた。
食卓テーブルの上にパソコンを置いて起動させ、
「どうぞ」と片手を出し、自由に弄って良い事を示す。
椅子に座らず立ったまま、メールの送受信欄をチェックし始めた。
そこには確かに紫の自宅PCのアドレスが残されていた。
一番古い物は約2年前。
驚いた…もう繋がりは切れたと思っていたのに、2年も前からメールをやり取りしていたなんて…
メールをし合う関係になったのは、彼女から送ってきたメールが切っ掛けだった。
その最初のメールの日付は、彼女が高校を卒業し富良野に帰って暫くした頃。
我妻さんをチラリと見る。
彼は俺の隣に立ち、腕組みをしながら無言で頷いた。
それを確認してから、彼宛ての紫のメールを開いて読んだ。


