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12月も半ばを過ぎ、モスクワ市街地は新年とクリスマスを迎える雰囲気で華やいでいる。
この地でも冬期間の外出を極力避けている俺だが、
我妻さんが街中で写して来た写真を見せてくれるから、街の賑わいは感じられた。
ゴーリキー公園前の大きなツリーは、光のボールを積み上げた面白いデザインで、人目を引く。
日の出前の暗い朝の公園でライトアップ中のそのツリーを見上げ、
口をポカンと開けている5歳くらいの幼女が愛らしく写っている。
商業区域の町並みも、街路樹や店頭を色取りどりのイルミネーションが飾り、まるでテーマパークみたいだ。
毛皮の帽子に厚手の長コートで身を包み、白い息を吐き寒そうに歩く人々。
暗く寒い冬のモスクワにあっても、イルミネーションの時期は華やいで、人々の表情も楽しげに見える。
自室の机に向かい、我妻さんの写して来た数枚のイルミネーションの写真を眺めながら思う。
確かにイルミネーションの眩(マバユ)い光りは綺麗だが、俺は人工的な光りより星空の方が好きだと。
富良野の夏に見た壮大なスケールの星空…
あの感動は今も心の中、色褪せはしない。
遮る物がなくどこまでも広がりを見せる夜空、
余計な人工の明かりのない闇の中では、肉眼でも星雲の儚い光りまで、はっきりと捕らえる事が出来た。
透き通る澄んだ大気の中、紺碧の夜空に瞬くのは…それぞれ違う色と大きさで輝きを競い合う、無数の星達。
そんな圧巻の星空を眺めていると、俺の心は幻想的な神話の世界へ導かれる。
星座の起源は、紀元前3千年とも5千年とも言われる。
はっきりした事は分かっていない。
メソポタミア地方の羊飼いが星を線で結び、絵を描いたのが起源だとも言われているし、
今ある星座とは異なるが、更に古く、古代エジプトの遺跡からは星座と思われる図形も見付かっている。
気の遠くなる様な悠久の歴史の中で、古来より人々は夜空に物語を描いてきた。
そしてその物語が変容を続けながら、現代の俺達にまで伝わった。
そんな風に流れる悠久の時間と古(イニシエ)の人々と…
それから、不思議な神話の世界を想いながら、星空を見上げるのが好きなんだ……


