「ねぇ…大樹はどう思う?
流星の幸せって…何?」
自分では答えの出せなかったその問いを、大樹にぶつけてみる。
大樹が正しい答えをくれると期待していないけど、
それでもその問いを口にしたのは、
頭の中を整理したかっただけかも知れない。
「お前は昔から面倒くせー事考え過ぎなんだよ。
何で今更お前が迷ってんだ。
答えなんて簡単だろ」
「簡単?そんな訳ないでしょ。
あんたは単細胞だから、多岐に渡って考えられないんだよ。
普通はね、色々考えて悩む物なの」
「ハッ うじうじ悩む位なら単細胞で結構だ。
『下手の長考休むに似たり』って言葉知ってっか?
ダラダラくだらねー事考えても意味ねーんだよ。
もっと直感で決断しろ。そんで動け」
「あんた……そんな諺(コトワザ)どこで覚えたの…?
えっ!?あんた大樹だよね?馬鹿な大樹だよね?」
「てめぇは俺の事バカにし過ぎだ。
20年生きてれば、ことわざの一つや二つ覚えるもんだ。
こんなのも知ってっぞ
『鼻くそ耳くそを笑う』」
自慢げに言ってるけど…やっぱりバカだね……
それを言うなら『目くそ鼻くそを笑う』だよ。
きっと面白いと思って少ない脳みそに記憶されていたんだろうけど、間違えてるよ。
同じ意味なら『五十歩百歩』の方が綺麗だから、そっちを覚えて貰いたい。
呆れ半分といつものおバカ振りに安心する気持ち半分で、少し笑って大樹を見ていた。
夕暮れの光りはとっくに消え去り、辺りは薄闇に包まれていた。
頭を冷やしに外に出たけど、頭どころか体の芯まで冷えてきた。
「ケツ、冷てーな…」
そう言って大樹は立ち上がる。
そして未(イマ)だ雪面に寝そべる私に向け、右手を差し出した。
今度は大樹を雪の上に転ばせたりせず、その手に向けて素直に左手を伸ばす。
大きな手が手首を掴み強い力でグイッと引っ張り起こされ、私の体はふわりと雪の上に立った。


