その事実を目にして初めに訪れたのは、純粋な驚きの感情。
アホみたいに口をぽかんと開け、ただただ、その写真を見続けていた。
どれくらい驚きの中で放心していただろうか……
マグカップの中で湯気を揺らしていたミルクティーはとっくに冷め、カウンターテーブルの上で沈黙していた。
外から聞こえていた除雪のトラクターのエンジン音も、いつの間にか止んでいた。
静かなリビングには西日が射し込み、流星の痕跡を映す画面の右端と私の右半身を、親密な光りの中に包み込んでいた。
背後で炎を揺らしていた洋風暖炉の中で、積み重ねていた太い薪が炭となり、
「カコン」と小気味よい音を立て崩れ落ちた。
静けさの中に響いた薪の崩れる音…その音で驚きの時間に終止符が打たれた。
驚きが去った後には妙に納得する心持ちになる。
冷めたミルクティーを一口飲み、「そっか…」と呟いていた。
我妻さんとメールをやり取りする様になってから約2年、ただの一度も流星の名前が出て来なかった。
写真展でお会いした時は、私より流星と話している時間が長かったし、
彼を気に入っている様子も窺(ウカガ)えた。
メールで『文学少年は元気かい?』と聞かれても良さそうなのに、
流星に関して全く触れられなかったのは、明らかに不自然だよね……
それは私に聞くまでもなく、側で流星を見ていたからなんだ。
そうすると初めにメールを送った2年前には…
いや、突然居なくなったあの時からすぐに我妻さんを頼って、モスクワに行ったのかも知れない。
流星がモスクワに居る事を教えてくれなかった我妻さんを、責める気持ちはない。
きっと流星に固く口止めされていたんだろうし、
教えたくても教えられない歯痒さを味わわせ、申し訳ないと思う。
でも結果として、我妻さんは流星の居場所を教えてくれた。


