リビングに一人残った私は、カウンターテーブルのデスクトップのパソコン前に座った。
背後では父お気に入りの洋風暖炉が、くべたばかりの薪(マキ)をパチパチと燃やし、赤々と炎を揺らしている。
暖かな空気と食後の満腹感が相まって、昼寝へと誘うけれど我慢した。
冬は体力を使わないから昼寝なんてしたら夜眠れなくなるし、太りたくないもの。
欠伸を噛み殺し、パソコンに電源を入れる。
ぼんやりと間延びした長閑(ノドカ)な午後の空気の中では、パソコンの機械音と画面の冷たい光の色は、何と無く不釣り合いに思える。
ホームページに載せたい写真をピックアップする為に、写真フォルダを開いた。
その中の富良野の風景写真を撮り溜めた『店用No.38』のファイルを開こうとして…
ふと思う所があり手を止めた。
自分で写した写真を見る前に、見たい写真があった。
開いたのは『店用No.38』の二つ隣のファイル。
そのファイルには『彩』とタイトルを付け、ある写真を保存していた。
高校生の時に流星と2人で見に行った『彩の写真展』
その写真展の主催者の“我妻ミチロウさん”は、あの時私達の写真を写し、
流星のノートパソコンとこのパソコンに、画像データを送ってくれていた。
パソコンを立ち上げる度に何度も繰り返し見てきたその写真、
『彩』のファイルを開き、今日も眺めていた。
見たくて見ているはずなのに明るい気持ちになれず、切なくなって頬杖をつきながら長い溜息を吐き出した。
写真の中の17歳の私は笑っている。
紺青色の鮮やかなワンピースを着て流星と寄り添いながら、一片の憂いもない最高の笑顔を彼に向けている。
こうして流星と離れる日が来るなんて…写真の中の彼女は微塵も感じていない。
再会を果たした私達は共に未来を歩んで行けるんだと…彼女は信じて疑わない。
写真の中で幸せそうに笑う彼女が妬ましかった。
流星と見つめ合え、笑い合え、触れる事の出来るあの頃の自分が…羨ましい……


