そうしてじゃれ合っている内に、ニヤリと悪戯小僧の様な笑みを浮かべた大樹が、私をくすぐり始めた。
「私は片手しか使えないのに卑怯だよ」
と文句を言うと、
「じゃあ俺も片手だけにしてやる」
と片手同士のくすぐり攻防戦が始まった。
薄紫色のベットカバーはグシャグシャになり床に落ち、
同色のカーテンは、エアコンの温風に揺られ幻惑のラベンダー畑へと誘うけれど、
ギャハハと騒ぎ立てる私達は、それに気づかない。
笑い声が響く室内に、驚いた瑞希君が、ドアの隙間からこっそり覗いている事にも気づかない。
頑張ったけど力と腕のリーチの差で、この勝負は大樹の勝ちだ。
笑い涙が滲んで降参し、ベットに仰向けに寝転んだ。
すると大樹が
「真ん中に寝るな。俺が寝るスペースがねーだろ」
と言って、私を壁際に追いやり、隣にゴロリと寝そべる。
「は?あんたここで寝る気?
ダメだよ、大樹はソファーで寝て」
ベットから蹴り落とそうとしたけど、重たくて無理だった。
「痛てぇ蹴るな。何もしねーから安心しろ。
俺は弟みてーなもんだろ?」
「いやいや…私、青空とだって一緒に寝たりしないから」
「うるせーな…早く寝ろ。
明日は、あのバカ野郎捜しに出かけんぞ」
「え…流星捜しって…
当てがあるの?」
「無え」
「………」
そんな事だろうと思った。
悪いけど、大樹の頭じゃ流星の居場所を見つけ出すのは無理だと思うよ。
流星の家族は教えてくれないし、私も瑞希君も何をどう捜していいのか分からずにいる。
それなのに大樹は
「俺が見つけ出してやるから」
と意気込みだけで簡単に言う。
半ば呆れて、半ば嬉しく思っていた。
策なんて全くないのに
「捜し出す」と言い切る言葉に、何故か安心する。
大樹の言葉に嘘はない。
いつだってバカ正直な奴だから。


