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[side 大樹 回想]
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この夏に流星が打ち明けた話しを、
まさか俺から紫に言わなきゃならねー日が来るとは思わなかった。
流星の命の期限……
頭を抱えたくなるほど、重てー未来の話し……
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富良野の8月の終わり。
これから秋の収穫時期に突入し、俺ん家の畑も段々慌ただしくなってきた。
そんな忙しい俺に弓を教えろと、迷惑な事を吐かして、流星が押しかけてくる。
奴が俺の元に通い始めて約一週間、ムカつくくらいの上達ぶりに今日も驚かされていた。
普通なら矢を放てる様になるまで2、3ヶ月掛かるのに、こいつはそれを一週間でやって見せた。
ムカつく以外の言葉が出て来ねぇ。
この分だと、こいつが本気で弓道を始めたら、すぐ追い付かれそうで……
いや、俺はもう弓は引かねーと決めたから、追い付かれ様が追い抜かれ様が、どうでもいいのか。
夕日が沈み夜になりかけ、辺りが薄暗くなった。
明後日紫達は東京に戻るから、こいつに弓を教えんのも明日で最後だな。
やっと面倒臭せぇ事から解放されて、清々するってもんだ。
暗くなったから稽古を切り上げ、弓と矢を倉庫内に片付けた。
シャッターを閉め表へ出ると、帰ったのかと思っていた流星が、倉庫裏に突っ立ったまま空を眺めていた。
さっさと紫ん家に帰ればいいのに、何してやがる。
星見てんのか?
そういや、ガキの頃から飽きもせずに、夜空ばっかり見上げる奴だったよな。
動かない星のどこが面白いのか、俺にはさっぱり分からねー。
流星に背を向け、自宅へ歩き出そうとしたら、呼び止められた。
振り返ると奴はまだ、星空を見上げたままの格好。
呼び止められたのは、気のせいだったのかと思っちまう。
しかし気のせいではなく、その後流星は星空を眺めるのを止め、俺を見ながらこう言った。
「大樹、俺と弓道勝負しないか?」
弓道勝負…?お前と俺で?
突然訳分かんねー事を言われ、面食らった俺は流星と数秒見つめ合っちまった。
何してんだ俺…
野郎と見つめ合うなんて、キモイだろーが。
目線を下にずらしてから
「やらねー」と答えた。


