大樹の胸に押し当てた左の拳が、ふるふると震えていた。
流星にとって私の存在は……
簡単に大樹に渡してしまえるくらいの…ちっぽけな……
愛してるって…言ってたのに……
「…流…星……」
衝撃的な事実に瞳が僅かに潤んだ時、優しい声が思い出の中から響いてきた。
『君はラベンダーみたいな女の子だね…』
そうだ…私は強いラベンダーなんだ…
泣いてはいけないんだ……
その声に緩みかけた涙腺は、再び鎖される。
でも…流星が居なくなった原因が、弓道勝負で負けたからだって言うなら…
私の弱さは関係ないのだろうか……
私が弱さを見せたから、あの物語と同じ結末を選んだわけではないのだろうか……
分からない…
泣いていいのか、悪いのかさえ、分からない……
衝撃と苦しみに呻く心の中を、様々な憶測と感情が錯綜し、大樹に問い掛けるべき言葉を失っていた。
どこかに飛んで行った筈のラベンダー色の薄いベールが、またひらひらと現れ、心の上空に漂っている。
再び幻惑のベールで心を守るのか、
それとも真実の強風に吹かれる事を許すのか……
拮抗する心を正しい方向へ導いてくれたのは、大樹だった。
広い胸元で震え続ける私の左手。
大樹はそれを静かに下ろし、大きく温かい手の平ですっぽり包み込んだ。
目の前にある瞳は、強くて真っすぐで、
そして、まだ決意と緊張を解いてはいなかった。


