「何でよ!!何で大樹が…
『俺はお前の側で、親友で弟を一生やってやる』って言ったじゃない……
あの時嬉しかったのに…心から喜んだのに……あれ嘘だったの…?
流星にそんな駆け引き持ち掛けてまで、私を手に入れたかったの?」
責めながらも、大樹がそんな事するとは信じ切れなかった。
信じたくなかった。
しかし、このメールは私を賭けたという事実を伝えている。
伸びてしまった大樹のトレーナーから手を離し、今度は厚い胸板を強く叩いた。
渾身の力を込め左の拳を叩き付けても、大樹は微動だにしない。
疑心と怒りと悲しみに満ちた視線をぶつけても、その一重の瞳は僅かにも揺るがない。
私の怒りを静かに受け止めていた大樹が、口の端を吊り上げ、ニヤリと笑った。
「いい面だ……やっとヘラヘラ笑うの止めたかよ。
キモイ笑顔を見せられるより、怒ってる方がずっといい」
「話しを逸らさないで!!」
「俺から言ったんじゃねーよ。あいつから言ったんだ。
勝負なんてしねーて断ったら
『紫を賭けての勝負なら受けるか?』ってな」
「嘘…だ……」
「俺がこんな嘘つくわけねーだろ」
「………」
そうだよ…
大樹はそんな駆け引き持ち掛ける様な、卑怯者じゃない。
例え私を諦め切れずにいたとしても、せこい駆け引きなんて絶対にしない。
大樹はいつだって、真っすぐに突っ込んでくる正直なバカなんだ。
大樹の事は私が一番良く知っている。
そう…大樹は弓道勝負に私を賭けたりしない。
でも…大樹からじゃないと認めたら…
賭けの話しは、流星から持ち掛けた事になる。
あの勝負に流星の勝ち目が無いのは、皆分かっていた。
弓道歴一週間の流星が、大樹に勝てる道理がない。
流星は負けるのを承知で、私を賭けた……
あの夏には既に、私を手放すと決めていた……


