弓道を辞めると決意した大樹。
大樹が一度決めた事を覆させるのは、私でも難しい。
それなのに流星は、弓道勝負を大樹に受けさせた。
どうやって説得したのか聞きたがる私に、流星は「秘密」と言って、教えてくれなかった。
それが今分かった。
『−−…あの時何を賭けたのか忘れてないよな−−……戦利品の受け渡し期日を早めたい−−……紫の卒業式の後…迎えに来て………』
弓道勝負で2人は賭けていたんだ……
『私』を賭けていたんだ……
流星が私を引き合いに勝負を持ち掛けたなんて、到底考えられなかった。
流星にとって私は、賭け事の代償に出来る様な、そんなちっぽけな存在である筈ないと思いたかった。
そうなると、その矛先は必然的に大樹に向かう。
震える手の中からスマホが落ち、床にゴトリと転がった。
その音と同時に振り返っり、左手で大樹の胸倉を掴んで強く揺さ振った。
「何よこれ!
あんた、あの時、流星に何を言ったのよ!!
“紫をくれるなら勝負してやる”とでも言ったの?
だから流星は、戦利品として私を渡す為に、居なくなったって言うの?
大樹っ!!」
心を覆っていた紫色のベールは、強風に飛ばされ、遥か彼方へ消え去った。
隠れていた衝撃と悲しみが露わになり、もうヘラヘラ笑って居られなかった。
大樹の鋭い眼光に、もっと鋭利な視線をぶつけた。
左手に力を込めると、大樹の着ているスポーツブランドのトレーナーが伸び、
衿元から大胸筋の盛り上がりがハッキリ見えた。
それくらい強く服を引っ張っても、揺さ振っても、大樹は姿勢も眼力も崩さない。
動じない大樹に、怒りの感情が加速していく。
「何とか言いなさいよ!
私を賭けるなんて…あんたが流星に言い出したの!?」
「そうだって言ったら?」


