珍しく落ち着いた静かな声色で呟く言葉は、
「なぁ紫…」と私に宛て話しているのに、私ではなく、大樹自身に言ってるみたい。
「なぁ紫…壊れてんじゃねーよ……いや、一回正しく派手にぶっ壊れろ。
そんで今度は正しく組み立て直せ。
そうしねぇと先に進めねーだろ……やらないといけねぇんだ…言わないとならねぇ……」
あれ…ゲームのやり過ぎでおかしくなったのかと思ったけど、
大樹は今、ゲームじゃなくてプラモデルにはまってるのかな?
正しく壊して組み立て直す…うん、いいんじゃない?
間違った組み立てをしてしまったら、一回壊して作り直した方がいいよね。
それはいいと思う。
でもね、私はプラモデルではないよ。
大樹、そんな事も分からない程にバカになった?
いつも以上にバカな話しをする大樹とは会話が噛み合いそうにないので、
言葉を返さず、変に真剣味を帯びた顔だけ、黙って見ていた。
大樹が薄紫色のベットカバーからやっと視線を上げると、訝しむ私と視線がぶつかる。
少しだけ目尻の釣り上がった瞳が、私の目の中に、射るような鋭い視線を向けてくる。
子供の頃から大樹は、
「目つきが悪い、もっとちゃんと目を開けなさい」
と母親によく叱られていた。
「俺のせいじゃねーだろ、これは親父の遺伝だ。
文句なら親父に言えや」
大樹がそう言葉を返し、
おばさんが
「そうだったアッハッハ!」
と笑うのが、大原親子のコミュニケーションの取り方。
一見、目つきが悪く見える大樹の一重の瞳。
この目に睨まれると大抵の女の子は怖がると思う。
でも、こうして睨まれている今、私は怖いなんてカケラも思わない。
よく見ると悪戯坊主だった頃のやんちゃな輝きも、
口が悪くても心は温かく、本当は優しい奴なんだって事も、
正直なその瞳は語ってくれる。
そう感じるのは、17年分の思い出を通して、大樹を見ているせいかも知れないけど。


