俺に食後の果物を断られた紫は、洗い物に手をつけ始めた。
ようやく食い物を出す事から頭を離し、片付ける気になったらしい。
ふんふんとヘッポコな鼻唄を歌う口の両端は、変に吊り上がっている。
青白く血色の悪い面に、曇りガラスの様な虚ろな目。
目の下にくっきりと浮かび上がるクマ。
こいつ昨日寝てねーんだろーな。
眠らず、バカ野郎の事を考え続けてたんだろーな。
どうせアレだろ?
自分のせいでこうなったとか考えて、自分を追い込んだんだろ?
あいつが居なくなったのは、お前が弱かったからじゃねぇ、あいつが弱かったからだ。
好きな奴に早死にするって言われて、泣かない女がどこにいるんだよ……
怖がって泣くなら側にいて支えてやれよ……
それなのにあいつはそれをしないで、泣かせる事が怖くて、事実を打ち明ける事から逃げたんだ。
怖がってんのはあいつ。
弱かったのは、あの大バカ野郎だ。
「大樹、何睨んでるのよ。
あんたに睨まれても怖くないから。
むしろ笑える、変な顔、アハハハッ」
「うるせー。てめぇの顔はキモ過ぎて、笑えねぇっつーの」
紫のキモイ笑顔を見ながら、右手をきつく握り締めた。
これから紫にアレを言ってやるぞと決意を固める。
なんか胸ん中が苦しいな……
苦しいっつっても、別に切ないとか…そんな女々しい感情じゃねーからな。
ただ…
バカ男の為に紫が作り過ぎた食い物が、俺の胃袋をパンパンに膨らますから…
そんで、それが胸までせり上がってくるから…
だから苦しくて仕方ねぇ…それだけだ。
「洗い物終わり!
次は何したら…もう10時か。
寝る用意…でも全然眠くないし…
あっそうだ、大樹の布団ないから、あんたはソファーで寝てよね。毛布は貸すけど」
「布団も毛布も要らねー。
今夜は寝てる暇なんかねーんだよ」
「は?寝ないで何すんの?
ここにゲーム機はないよ?」
「アホか、わざわざこんな遠くまでゲームやりに来るわけねーだろ」
「じゃあ何しに来たのよ」


