程なくして、制服姿の流星が庭にやって来た。
2人で虫に食われていないどんぐりを選んで拾い、小さなビニール袋に集めた。
富良野に帰ったら、あちこちに埋めてみよう。
上手く芽を出してくれるといいな。
学校の敷地にも勝手に埋めてみようかな?
怒られるだろうか…
いや、邪魔な場所じゃない限り、ニョキニョキ生えてきても誰も気にしないと思う。
うちの学校は校舎周りの環境整備と言うか…その辺に関しては大雑把で、
学校の花壇で慶子さんが勝手に野菜を育てていても、誰も気付かないみたいだし……
あっ!この前慶子さんに頂いた大根、おでんにして美味しく食べましたって、報告に行かないと……
どんぐり拾いは、童心に返ったみたいに楽しかった。
「流星見て見て!このどんぐり大きい!」
「さっき俺が見付けたやつの方が立派だったよ。
あれ…どこいったかな…」
そんな子供染みたやり取りが可笑しくて、
笑いながら夢中で拾っている内に、気付けばビニール袋から溢れそうになっていた。
「50個以上あるよね…拾いすぎ?
こんなに植えたら、富良野も学校も、数十年後には柏の森になっちゃうかも!」
私がそう言って笑うと、
流星も「素敵だね」って微笑んでくれた。
でも…
「数十年後の柏の森か…」
そう呟いて柏の木を見上げる流星が、なんだか淋しそうに見えて……
「流星…?」
「あ…そろそろ準備しないと学校遅刻する」
「わっ本当だ!もうこんな時間!
急いで朝ご飯の用意するから!」
慌てる私を見て可笑しそうに笑う、その笑顔も、優しい眼差しもとても自然で、
さっきの寂寥感は跡形もなく消え去っていた。
最近流星に対して
「あれ…?」と感じる事が度々ある。
でもこうやって、すぐにいつも通りの流星の表情に戻るから……
愚かな私は、彼が抱える不安に、最後まで気付けなかった……


