「良かった…瑞希ありがとう」
「アハハッ なんで大ちゃんがお礼言うのさ、逆じゃん。
紫ちゃんに下ネタまでかまされて、必死にお願いされたら、ちっぽけなプライドくらい捨てるよ。
大ちゃんありがとう。
悪いけど、卒業までの2ヶ月分の家賃はお願いする。
でも、卒業したらバイトしてきっちり3分の1払うから。
で……その家賃っていくら?
驚く額じゃないよね…」
そんな訳で、柏寮を出てからの住家は無事に決まり、私達は一緒に暮らせる事になった。
その後流星がシャワーを浴びに出て行って、
瑞希君がこたつで蜜柑の皮を剥きながら、私に教えてくれた事があった。
「大ちゃんがライトノベルを書いてた理由がやっと分かった」
「え…?どういう事?」
流星は今まで5冊のライトノベルを出版していて、
それから入って来る印税で、そこそこ裕福だと言っていた。
それを読んでみたいと言うと、女子中高生向きの恋愛小説で、主人公も女の子にしているから、恥ずかしくて読ませられないと前に断られた。
その時、耳まで真っ赤になった流星を見て、今までその話題には触れずにいたけど、
そんなに恥ずかしいと思うなら、別ジャンルを書けばいいのにとチラリ思っていた。
「大ちゃんさ、いずれ柏寮から出される事を予測して、お金を稼ぐ為に書いていたんじゃないかな。
この部屋の本棚を見たら分かるけどさ、古典文学や純文学ばかりでしょ?
ライトノベルなんて一冊も置いてないのに、なんで軽い恋愛物ばかり書いてたのか、不思議に思っていたんだ。
純文学で勝負しても売れるかどうか分からないし、厳しい世界だからさ…
取りあえずお金の為だけに、興味のない分野にも手を出していたんじゃないかな。
柏寮がこうなる事を見越して、君と僕の生活の為に……」
瑞希君の推測はきっと当たっていると思う。
彼に言われるまでその事に気付かずにいた私は、やっぱりまだまだ愚鈍だ。


