「デートか…
そう言えば、俺達って、まともなデートしたこと無かいよな」
流星に言われて私も気づいた。
映画とかショッピングとか、レジャー目的で2人で外出した事はない。
2人切りの外出がなかった訳じゃなく、月に一度は必ず電車に乗って外出してるけど…
それは私の病院の、定期受診の為。
病院帰りにドーナツ屋に寄ったりハンバーガー食べたりしてたから、
少しはデート気分でいたものの、まともなデートとは…言えない。
そっか…彩の写真展を見に行くのが、私達の初デートになるのか……
半同棲状態の私達の関係でも、
『初デート』と言う言葉には、何か心浮き立つ物を感じる。
「瑞希君、デートって何着て行けばいいのかな?
鞄は?靴は?メイクした方がいいと思う?」
「へ〜珍しい〜
紫ちゃんが女子高生の顔してる〜」
「珍しいって何よ…
間違いなくいつも女子高生の顔してるでしょ?」
「恋愛にウキウキしてる所は、あまり見たことないって言う意味だよ。
こういうのもいいんじゃない?
今更な初デート、楽しんできて」
「今さらな初デート?」
「そう!今更な初デートの日は、可愛げのない君を、僕の技術で可愛く仕上げてあげるね。
紫ちゃんって大して服持ってないし、僕のワンピース貸してあげる。
メイクも僕がするよ。
君が自分ですると、オバケになりそうだし、髪型もアレンジしてみよう」
「なんか…酷い事いっぱい言われたけど……よろしくお願いします」
「任せといて〜その代わりお土産宜しくね!
〇〇の秋の新作ケーキ、調度発売するんだよねー。
和栗のモンブランと、キャネルキャフェと、シャルロットポワール買ってきて」
私と同じくらい、瑞希君も楽しそうな顔をしていた。
お土産のケーキが楽しみだと言うだけの笑顔じゃない。
私の顔に髪に制服に、視線を巡らせながら、どう作り上げようかと考えているみたい。
生き生きとした瞳を向ける彼の頭の中では、
きっと当日のファッションコーディネートとヘアメイクが、既に始まっているのだと思う。
瑞希君が選んだ美容師の道は彼に向いている。
好きな事を職業に出来るなんて素敵だね。
私達3人の将来設計は間違えていない。
間違えているのは、やっぱりあの先生だ。