「あっ そうだよ。
私、ラベンダーの香水もオイルも付けてないよ?
シャンプーも洗剤も別の香りの物だし」
自分でも制服の半袖ブラウスや髪の毛をくんくん嗅いでみたけど、
やっぱり洗濯洗剤とシャンプーの匂いしかしなかった。
「何で?」と言う視線を隣に向ける。
すると流星も不思議そうに「あれ…?」と言って
もう一度私の首筋に鼻を寄せ、
「そうか…」と呟き、一人で納得していた。
「流星、何が“そうか”なの?」
「んー、匂いの元は俺の脳内にあった」
「脳内…? 良く分かんないんだけど……」
「紫とラベンダーって、俺の中で強くリンクされてるから、
実際には香らなくても、紫を見る度に俺の脳内で優しい香りが再現されるって事。
そうか…、紫を『ゆかりちゃん』と呼んでいた時も、この香りを感じていたんだよな……
てっきりラベンダーの香料使っているのかと思っていたけど、
俺の記憶と意識が作り上げた、幻臭だったのか……」
香りの脳内再現…?
そんな事ってあるのかな。
アレかな…
この例えは色気が無さ過ぎるけど、
テレビや写真でラーメンを見たら、ヨダレと共にラーメン屋の匂いを思い出すのと同じって事かな。
ペペロンチーノを口に入れているのに、札幌味噌ラーメンが食べたいなんて思っていると、
瑞希君が逸れた話しを戻してくれた。
「紫ちゃんの香りについては、後でゆっくり2人で話し合ってよ。
まだあの話しの途中だよ?
スマホ見ながら、あの先生の行きつけのキャバ嬢の名前出してたけど、
あれはどこから仕入れた情報?」
そうだった。
ワイシャツの皺とネクタイピンの跡と、甘い香水の香りから、あの先生に女性の影があると推測した所までは分かったけど、
その女性の名前やお店まで当てちゃうなんて、どう言う事だろう?
流星は私と瑞希君の3倍の量のペペロンチーノを綺麗に平らげ、
インスタントのコンソメスープを飲み干すと、ニッコリ笑って説明した。


