「前年度まで生活指導を担当していただけあって、先生って身なりには気を配ってましたよね。
いつもなら皺一つない真っさらなワイシャツを着ているのに、今日はやけによれている。
昨日から同じ物を着ていた…違いますか?
それとも2学期に入ったら、奥さんアイロンかけるの嫌になったんですか?」
「き、昨日と同じ服じゃない。今朝は家から出勤してる。
皺になっているのは…妻の体調がすぐれないから、今日は洗いざらしのまま着て来ただけだ。
妙な事言ってからかうのは…」
「へぇー奥さん風邪ですか?それは大変。お大事になさって下さい……
と納得はしませんよ。
おかしな点がまだ有りますから。
ネクタイピンの跡が2ヶ所も付いてますね。
何故ですか?
昨日と今日の…2日分の跡なんじゃないですか?」
「それは…あれだ、ネクタイピンの位置が気になって、始業式の途中で直したから…」
何とか辻つま合わせを頑張る先生だが、そんな先生を流星は更に追い詰めて行く。
「往生際が悪いですね…
これを突っ込むのは可哀相だと思ったんですが…
そのまま帰って奥さんにばれるのも可哀相なので、教えてあげます。
襟の内側に…うっすらとピンク色の口紅が付いてますよ。
首筋に付けられたお姉ちゃんの口紅が、移ってしまったみたいですね」
「何!?」
襟の内側の口紅…?
そう言われて先生の襟元に目を向けたけど、両手で慌てて襟を押さえているから見えなかった。
でも…本当に付いていたかは怪しいよね。
襟の内側って、脱がないと見えないじゃない。
そんな事にも気付けない程、慌てている3-Fの担任。
それを皆が冷ややかに見つめる中、流星は足の間で呑気にスマホをいじっていた。
「だ、大文字!
お前は大人をからかう様な事ばかり言って、今は進路の指導中だ!関係ない話しは…」
何とか形勢を取り戻そうと声を荒げる先生。
でも、両手は襟元を覆ったまま離そうとしない。


