ラベンダーと星空の約束

 


流星は腕組みを解き、長机に両肘を付いた。


長い指を組んでその上に顎を乗せ、目線を担任の胸元に向ける。



暑いのでネクタイを外し、上半身はワイシャツ一枚の先生。



流星はその胸元に止めていた視線をゆっくりと上げて行き、

まっすぐ目と目を合わせ、ニヤリと笑った。




「俺達の進路については、例外って事で許して貰えませんか?

先生は進路指導のトップですから、それ位の権限はありますよね?

そうしてくれたら…先生の秘密も黙っていますけど?」




「なっ…何を訳の分からん事を…」





鈍い私にも分かるほどに
3-Fの担任は動揺していた。



口では「訳の分からん事を…」とごまかすけれど、

左右に揺れる瞳を見れば
「秘密はある」と暴露している様な物だった。





「いいんですか? 
先生の秘密、俺、喋っちゃいますよ?」




「秘密なんてない!
適当な事を言って話しを逸らすな!」




「へぇー…、これって秘密じゃないのか。
じゃあ、言ってもいいんですね」





流星は作為的な瞳を光らせ、綺麗な人差し指で担任のワイシャツを指差した。




「そのワイシャツ、昨日着てた物と同じですよね?

家に帰る暇もない程、新学期の準備に忙しかった…なんて事はないですよね。

先生ってせっかちなタイプだから、新学期の準備なんて、夏休みの始めにとっくに済ませてますよね」




「…… 何で…」





3-Fの担任程ではないけれど、

私も瑞希君もうちのクラスの担任も、驚いて流星と先生を交互に見ていた。



今日は2学期の始業式。

まだ夏休み中の昨日、流星が担任と顔を合わる筈はなく、

なぜ昨日と同じワイシャツを着ているのが分かったのかと、不思議に思っていた。



皆の視線を感じとった流星は、探偵が事件の謎解きを始める前の様な、意味ありげな笑い方をした。