私達3人で何かをする時、流星がお金を出す事が多かった。
「皆で食べよう」と言い、よくコンビニでお菓子も買ってくるし、
時々ネットショップで、私に服(主に可愛い系の下着)を買ってくれたりもする。
私と瑞希君よりは仕送りが多いのかも知れないけど、
自分で稼いだお金じゃないし、高校生らしくキッチリ割り勘にするべきだ。
そう思って言った『割り勘』の言葉に、流星は首を横に振った。
「タクシー代は俺が払う。
無職の君達に払わせたくないよ」
「そんなの流星だって同じじゃない」
何を言っているのだと言う視線を送れば、
改札に向けて足を進める流星が、何でもない事の様に言った。
「俺は収入源があるんだ。
本の印税が入ってくるからさ。
仕送りが無くても生活していけるし、何気に今は裕福だから遠慮しなくていいよ」
「そうなの?」
本て…あれだよね?
『ラベンダーと星空の約束』
新書で発売されたのは数年前だけど、まだ売れ続けてるの?
その疑問を言葉にすると、流星は今度は言い難そうに答えた。
「あの本じゃなくて…
その後に小説5冊出版してるから…今はそっちの方からの収入がある」
「ええっ!?」
流星がまだ小説を書き続けているなんて知らなかった。
しかも5冊も出版されてるなんて。
それには少なからず驚いたけど、振り返ると思い当たる点もある。
自室でノートパソコンに向かい、キーボードを叩いている姿は日常的に見られた。
ただ「何してるの?」と聞いても、
「明日提出の課題」とか
「父さんにメール」とか、
いつも納得する答えを返されるから、小説を書いている事には気付けなかった。
駅を出てタクシー乗り場に向かい、客待ちをしている先頭の一台に乗り込んだ。
荷物をトランクに入れ、後部座席に私を真ん中にして3人で座る。
暑い外気から遮断されたタクシー内部は、冷風が流れて心地好い。
行き先を告げ発車すると、再び流星の小説の話しを持ち出した。
瑞希君も知らなかったみたいで、私同様、興味津々だ。
「小説書いてる事、私知らなかったよ。
何で教えてくれないの?
読みたいのに」