矢を弓に番え、高く持ち上げる。
高い位置で弓を押して弦を引きながら、ゆっくりと目の高さまで引き下ろす。
キリキリと弦が引き伸ばされる音が聞こえる。
そのまま数秒間、的を見据えて瞬きもせず静止している。
背筋がピンと張って体のラインが綺麗だ。
極限まで高められた緊張感と集中力。
それでいて、的中させようと言う気負いは、微塵も感じられない。
『動』と『動』の間の、束の間の『静』
私の好きなその瞬間の大樹に、胸が震える。
大樹なのに…
この瞬間だけは、凛として美しい……
これが見たかった。
やっぱり大樹は、弓を引いている時が一番輝いている。
さっきの流星にも美しさを感じたけど、大樹の射型の美しさには、重みと深さがある。
何年も鍛練を積み重ね、弓道を通して色んな自分と対面し、そうして身につけたこの美しさ。
緊張感や力強さも、自然な美の中に上手く調和して、
「ほうっ…」と溜息を漏らしてしまう様な、雄大な射。
この射型を身につけるまでの過程を、私は大樹の側で見続けてきた。
数年分の想いを込めて見ているから……
だから…大樹の射を見ると心が震えるんだ……
久しぶりの大樹の射に心を奪われている内に、
気付くとあっという間に10射を終えていた。
結果は全て的中。
この勝負は大樹の勝ちだ。
嬉しくて感動して立ち上がった。
「大樹!」
呼び掛け、ひょこひょこと足を踏み出す。
駆け寄りたいのに、そう出来ないのがもどかしい。
もう少しで大樹に手が届く…
その一歩手前で、麻痺足が付いて行けず、小さな草の根に引っ掛けて転びそうになった。
「危ねっ!」
大切な弓を投げ捨て、大樹が抱き留めてくれる。


