家には入らず、すぐに倉庫裏に向かう。
倉庫の角を曲がると、本当に大樹が弓を引いていた。
その姿に目が釘付けになり、足を止めた。
大樹は巻藁に向け、一定のリズムを保ち淡々と矢を放つ。
パシュッ…… バスッ
パシュッ…… バスッ
弦が矢を弾き、巻藁に刺さる一年振りの音が、
夕暮れ色の畑の中に浸透して行く。
畑の作物が収穫最盛期の今、大樹はかなり忙しい。
朝から農作業に追われ、きっと久しぶりに弓を引いたのは、ついさっきの事だろう。
落ち着き払って、静けささえ感じる大樹の射。
だけど…
何と無くだけど…その横顔に、葛藤と苦しさが滲んでいる気がする。
どうか乗り越えて欲しい。
大樹なら、乗り越えられると信じたい。
大樹……
大樹の射を無言で見つめていると、流星の温かい手が私の冷たい手をそっと包んだ。
「大丈夫…
大樹なら大丈夫だよ」
「うん…」
ゆっくりと近付くと、大樹は私達に気付き、弓を下ろした。
「大樹…あのね…」
戸惑いながら話しかける。
すると、こう言われた。
「何て顔してんだよ…」
「え…どんな顔?」
「シリアス過ぎて、きもいブス顔」
「はあ?」
「んな顔してないで、いつもみたいにアホ面さらして笑ってろ」
「あんたねぇ……」
意地悪な笑い方で、いつも通りムカつく事を言うけど、
私の頭に乗せられた大きく厚みのある手の平は…優しくて温かかった。
既に用意されていた私の為の椅子、野菜収穫用のカゴに座り、
試合形式について話し合う2人の姿を、離れた位置から見つめた。
弓も的も一つしかないから、交互に打ち合う事は出来ない。
先手流星、後手大樹で一気に10射ずつ矢を放ち、
その合計的中数で勝敗を決めるらしい。
「頑張ってー!」
呑気に声を掛けると、振り返った2人が同時に、
「どっちに言ってんの?」
と意地悪な事を言う。
「2人共だよ…」


