「…… 俺に勝てる訳ねぇって、分かって言ってんだろ?
お前の紫に対する気持ちは、そんないい加減なもんなのか?
それともアレか?
あいつが障害負ったからって、見捨てんのか?」
「違うよ。
俺の想いはその二つのどちらでもない。
紫を愛してる。
彼女を愛する気持ちは誰にも負けない…大樹にも負けないと思ってるよ。
何よりも愛しい存在…誰にも渡したくない……」
「だったら、何で んな事言ってんだよ…分かるように説明しろ」
大樹の怒りと侮蔑を含む鋭い眼光は、紛れも無い紫への愛情の表れ。
睨みを利かせるその眼差しを嬉しく感じ、頬を緩めた。
目を閉じ一つ息を吐き出し、大樹に伝えたのは十数年後の未来の話し。
「弓道勝負に賭ける物は…今の紫じゃない。
彼女の十数年後の未来だよ……
彼女の未来に、俺は……………………――――――――――――――――――――」
淡々と話す俺の言葉を、大樹は目を見開いて聞いていた。
全て聞き終わると、しばらく放心し、
深い溜息をついて、その場にしゃがみ込んだ。
「…マジかよ………
それ…何とかならねぇの?」
「多分ならない。
期日を延ばせる様、努力はするけど」
「…紫は知ってんのか…?」
「いや…まだ言ってない……
いつか話す……」
「…大丈夫かな…あいつ……」
「大丈夫だよ……
紫だから大丈夫…きっと……」
“紫だから大丈夫”
再会して間もない時、
俺がまだ『紫』を『ゆかりちゃん』と呼んでいた時に、食堂で言った彼女の言葉を覚えている。
―――…
「流星…あの本の結末、書き直してくれない?」
「何で?良くなかった?
悲恋が結構評判良かったんだけどなー」
「あの女の子は、あんなラストじゃ幸せになれないよ……
私なら、辛くても苦しくても好きな人と一緒にいたい。
一緒に生きられるなら、その後の悲しい別れに傷つくのなんか、怖くない」
――――…
紫は、漆黒の美しい瞳に強い光を宿し、まっすぐに俺を見てそう言ったんだ……


