大樹は「あ…?」と驚きの声を上げた後、
予想通り拒否した。
「勝負って…やる訳ねーだろ。
俺は…二度と弓は引かねぇ…
大体、何の為の勝負だよ。
意味分かんねぇ。アホか」
「何の為だっていいじゃないか。
お前、対戦ゲーム好きだろ?そんな感覚でやろう」
「やらねー」
「一万円賭ける」
「絶対やらねー」
「5万」
「超絶対、最上級にやらねー」
「…それなら…紫を賭けての勝負…と言えば受けるか?」
そう言った瞬間、胸倉を掴まれ、倉庫の外壁に押し付けられた。
後頭部が壁に当たり、ゴツンと鈍い音が響く。
「痛って……馬鹿力め…
少しは加減しろよ……」
「…ふざけたこと吐かしてっと…ぶっ飛ばすぞ……」
月明かりしか届かない暗がりでも、大樹の眼光は鋭い光を放っていた。
こいつは腕力バカだな……
紫の事になると、見境無く、すぐにカッと熱くなる。
単純で馬鹿…
だけど大樹は嫌いじゃない。
俺に無い物を沢山持っている大樹には、寧(ムシ)ろ憧れに似た感情を覚える。
体が浮きそうな力で胸倉を掴み上げる、筋立つ腕。
その腕に手を当て、宥める様にポンポン叩く。
「大樹…ふざけてないよ…
冗談でも嘘でもない。
真面目に話してるから、離して」
静かな声でそう言うと、大樹はやっと手を離した。
だけど鋭い眼光はそのままだ。
さっきの言葉に対する怒りの感情は、ハッキリと瞳の中に見て取れた。
皺になったシャツを正すと、ボタンが飛んでしまったのか、一つ見当たらなかった。
夜闇の中じゃ見つけられそうにない。
スペアもないが、無くす物が彼女との未来じゃなくボタンなら…
容易に諦めがつく……
「大樹…冗談じゃなく、紫を賭けて俺と勝負して」


