ラベンダーと星空の約束

 


 ◇


流星と一緒に倉庫裏に行くと、片手にゴム弓、もう一方の手に野菜収穫用のプラスチックのカゴを引き擦った大樹がいた。



カゴは私が座る為に持って来てくれた様で、適当な場所に裏返して置いてくれた。



それに座り2人をジッと見る。



大樹はゴム弓を地面に置いて何も持たずに、流星の前で射法八節の一連の動作を説明しながらやって見せる。



足踏み、胴造り、弓構え、打ち起こし、引き分け、会、離れ、残心……



弓も矢も手にしていないのに、大樹の表情はどこか苦しげで…

一通り説明し終えると、小さな溜息をついていた。



流星の表情は真剣だった。

瞬きもせず、目に動作を焼き付けている。




「これを覚えないと何も始まらねぇ。

ゴム弓引くのもこれが出来てからだ。

じゃあもう一回、今度は区切りながらやってやるから、真似してみろよ」




大樹が「足踏み」と言いながら足を開いた時、

流星はそれを止め、私まで驚く事を言った。




「待って、もう覚えたからお手本は要らない」




「…は?アホか。
そんなに簡単に覚えられる訳…」




「覚えたよ。見ていて。
今の一連の動作やってみせるから」




形を適当に真似するだけなら、私にだって出来る。



けれど流星は驚く私達の前で、大樹が説明した細かな点まで完璧に網羅した、美しい射法八節の射型を再現して見せた。



呆気に取られる私達。

大樹はしばらく言葉を無くし、やっとのことで口を開いた。




「やった事あんのか…?」




初心者だと分かっていても、思わずそう言ってしまう。



流星の型はそれくらい完璧で、まるでお手本の様に美しかった。




「やった事はないよ。

だけど昼休憩の時にYouTubeでどこかの師範の動画を繰り返し見ていた。

大樹の説明でどこがポイントかも分かったし、形を覚えるのは得意な方なんだ」




「何だよそれ…ムカつくけど…すげぇな……」





そう言えば、体育祭の時の流星のテニスも、試合向きじゃなかったけど、フォームだけは完璧で美しかった。