ラベンダーと星空の約束

 


流星を見ると、彼は軽く頷き、大樹の背中に優しく声を掛けた。




「使い方教えてよ。

射法八節とか言うのも、教えてくれないと何をどうしていいのか分からない。頼むよ」




「紫に聞け」




「私だって分かんないよ。

見てただけで、自分でやった事ないもの」




「………」




「ねぇ大樹、お願い。
流星に教えてあげてよ」





お願いしながら大樹の足をツンツン突くと、


「あ゙〜分かったよ。
…ったく、何だよてめぇらは……」


大樹はブツブツ言いながら面倒臭そうに立ち上がり、部屋を出て行った。



階段をドスドス下りて行くから、倉庫にゴム弓を取りに行ったのだろう。



私達も大樹の後を追い、散らかり放題の部屋を出た。




弓道初心者はすぐに弓に触れない。



初心者はまず弓も矢も何も持たずに、『射法八節』と言う、所作と形を覚える所から始める。



それを体と頭に叩きこんでから、

棒にゴム紐の付いた『ゴム弓』という練習道具で、弦を引く感覚を掴む。



それから本物の弓を、矢無しで引く『素引き』、

その後にやっと『巻藁(ワキワラ)』、『的前』と矢を放つ事を許される。



大樹に再び弓を持たせる方法をお店の休憩室で相談していた時に、

流星は弓道勝負を挑むと言い出した。



その為に大樹に一週間習ってマスターすると。



大樹の弓道を子供の頃から見てきた私は、流星よりは弓道の奥深さを知っている。



一週間足らずで矢を放てる様になるなんて不可能だと思っているし、それを流星に説明した。



なのに流星はやけに自信たっぷりで、本気で一週間で習得出来ると信じているみたい。



仮に矢を放てる様になったとしても、流星の言う勝負とやらを、大樹が受けるとは思わない。



大樹は頑固だから、やると決めた事は貫くけど、やらないと決めた事も同じ。



「勝負なんてしねーよ。辞めたんだ、放っとけバーカ」

そんな風に言われるのがオチだ。



だけど……

私が流星の計画に乗っかったのは…

大樹が流星に教えている内に、もう一度弓を引きたいと思ってくれたらいいなって…

そう思ったからなんだ……