ラベンダーと星空の約束

 


「ゴツン」という鈍い音と

「ゔっ」と呻く低い声がほぼ同時に聞こえた。




「痛っ…てーー!!
…ん? おわっ! 紫!?
お前何してんだよ!!」



それはこっちの台詞だと思いながら、緩んだ大樹の腕を押し退け起き上がる。



驚きと共にやっと目を覚ました大樹も、叩かれた頭を摩りながら身を起こした。



そしてやっと、目の前で仁王立ちする流星に気付き、

「おわっ!」と再び驚きの声を上げる。




「お前ら…何してんだ?
寝起きドッキリか?」




「バカ…そんな訳ないじゃない。

普通に何度も声掛けたのに、叩かれるまで起きなかったんだよ」




「ふーん…お前ら店は?」




「お店は暇だからいいの。
大樹あのね?弓貸して?」



「…… は? 何で?」




「流星がやってみたいんだって」





三度(ミタビ)驚きの表情を浮かべ、大樹は流星を見た。




「辞めたんだろ?
使わないなら、人に貸せない理由はないよな?」




「… 流星が弓?
…何考えてんだよ……」




「大した理由はないよ。

最近体の調子もいいし、何かスポーツやってみようかと思って。

俺って団体競技は向いてないんだよな。

今、個人種目で向いてそうな物を模索中。

体育祭はテニスに出たけど不向きだと気付いたし、弓道も体験してみたい。

ダメ?愛用の大切な思い入れのある弓だから、人には貸せない?」




「別に何も思い入れなんてねーよ。

けどな、ズブの素人がやってみたいからってすぐに弓は引けねぇ。

矢を放てる様になるまで2ヶ月は掛かる。

今日やれるのは“射法八節(シャホウハッセツ)”の形を覚えて、せいぜいゴム弓引くくらいだ」




「ふーん…じゃあそれでいいよ。
ゴム弓って言うのをやらせて」




「倉庫にある。
場所は紫が知ってるから、勝手に出して遊んでろ」





大樹はぶっきらぼうに言い放つと、再びごろりと寝そべり、流星に背を向けてしまう。



不機嫌そうな大樹、

怒っている様にも見えるけど、ここで引き下がる訳にいかない。