流星の背中に頬をつけ、実りの季節を迎えた広大な畑を眺めていた。
畑の中には大樹の姿も、おじさんおばさんの姿も見当たらない。
晴れていても、大雨の翌日はむやみに畑に入らない。
ぬかるんだ土の上を歩き回ると、折角フワフワに耕した土が締まって固くなってしまう。
大樹の言っていた通り、今日は畑仕事は休みらしい。
自転車の荷台に揺られる事5分で、大樹の家に着いた。
家の横にある大きな倉庫のシャッターが全開になっているから、
きっと大樹のおじさんは、倉庫内で何か作業をしているのだろう。
大樹の家の玄関の引き戸をガラガラと開けた。
コンクリートの敲(タタ)きには、新しいけれど泥汚れの付いた大樹のでかいスニーカーが無造作に転がっている。
おばさんのサンダルと数年間履き続けている見慣れた婦人靴は、きちんと揃えられ隅に置いてあった。
「こんにちはー
大樹いますかー」
玄関先で呼び掛けると、大樹のおばさんが座った姿勢のまま、居間から廊下に顔だけ出して、
「部屋で寝てるから上がんなさい」
と言ってくれた。
私の後ろから流星が挨拶する。
「こんにちは、お邪魔します」
おばさんは眉を上げ少し驚いてから、
「よいしょ」と立ち上がり、玄関先まで出てきた。
「青空かと思ったら違うのかい。
紫の友達?随分とハンサムな男の子だね」
「おばさん流星だよ。
あれ…初対面なのかな?
私が小5の時にフラノに居て、一緒に遊んでたんだけど」
「あ〜あんたが流星か。
話しだけは奈津子(紫の母)から聞いてたよ。
あれだろ?紫が東京まで追っかけて行って、そんでうちの馬鹿息子が紫にフラれたってやつだろ?
アッハッハッ!」
「お、おばさん知ってたんだ…」


