「あんなに真剣に打ち込んできたのに…私のせいだ……」
「紫のせいと言うなら、俺のせいでもあるよ。
そんな事考えるのはもう止めよう。
入院中に紫が言ったんじゃないか、謝ったらダメだって。
責任の所在を追及するより、前を向こうって…君が俺に諭してくれたんだろ?」
「あ……そうだよね……
自分の障害に関してはそう思っていたけど…」
「君の体の傷も、大樹の心の傷も同じだよ。
自分を責めないで、これからどうするかを考えよう」
「うん…流星…ありがと…」
自分で言った言葉は、大樹の事になるとすっかり忘れてしまっていた。
流星はそれを思い出させてくれた。
そうだった。
自分を責めても何も良いことはない。
苦しくなって、思考が狭まるだけだ。
今は…とにかく大樹に会いに行こう。
お握りを食べ始めた私を見て、流星はホッとした様に、柔らかい笑みを浮かべていた。
そっか…動揺してるのか緊張しているのか…流星の指先が冷たかったのは、
大樹が弓を引けなくなった事実に対してだけじゃなく、
私が変に思い詰める事を心配していたからなんだ……
流星の気持ちを嬉しく思いお握りを食べ終え、大樹の事を話し合った。
「落馬したらすぐに馬に乗れって良く言うだろ?
時間が経つと、恐怖心が強くなって馬に乗れなくなるからさ」
「もうかなり時間が経ってるよ」
階段を落ちてから、弓に触れていないと言う事は…
8ヶ月も経ってしまった。
「そうだな。随分時間が経ってる…けどやってみよう。
これ以上時間を空けない様に、俺達がフラノにいられる後1週間の間に、大樹に弓を握らせてみよう」
「どうやって?
きっと『辞めるって決めたんだ、やらねーよ』って言われるよ?」
「俺に考えがある……」
◇
流星と一緒に休憩室を出た。
調理場を通る時、母が
「何とかしてやんなさいよ」
と私達を送り出してくれた。
店を出て、大樹の家まで自転車2人乗りで向かう。
昨日出来た水溜まりが乾き切らずに、舗装道路のあちこちに斑(マダラ)模様を作っている。


