そう言えば、今年の瑞希君は普通の格好で、コスプレしていない。
それは私にこの衣装を貸す為だったのか…
「絶対にそれ着て。
着るまでトイレから出さないよ?
ほら早く〜大ちゃんの貴重なテニス姿見れなくてもいーのー?」
理不尽さに物凄く反論したかったけど、
言い争っていたら、本当に試合が始まってしまうので、諦めて着替えをした。
不本意だけど、最近の私は、コスプレに抵抗感が薄れたのかも…
もちろん瑞希君のせいで。
着替え終えた私を再び抱え上げ、瑞希君は走ってテニスコートまで戻った。
「ねー、何で私がチアガール?
瑞希君目立つの好きでしょ?何で私に着せるの?」
「その内分かるよ。
あっ試合開始の笛がなってる。
はいみんなー、そこ開けて〜通して〜
そこは柏寮の特等席だからねー」
女子の群れにズカズカ入って行く瑞希君は、
迷惑そうな視線を一切無視して、フェンスの真ん前に陣取った。
やっと彼の腕から下ろされた私は、後ろの女子に「ごめんね」と一応謝っておいた。
割り込んだこの場所は、流星側コートの真ん中真後ろ。
レシーブを構える流星の背中が、間近に見える位置。
向こう側コートの対戦相手の表情は見えるけど、流星は後ろ姿しか見えない。
3ゲームの内2ゲームを取ったらお終いと言うルールのこの試合、
短い物だから、途中でコートチェンジする事なく、流星の表情が見えないまま終わりそう。
どうせなら真剣な表情が見たいから、逆側か横からが良かったな…
今からまた、人を掻き分けて割り込んで行くのは嫌だけど。
「大ちゃーん、ファイトー!
紫ちゃんも来てるからねー!」
瑞希君が叫ぶと、流星は振り返らず、片手だけ上げて応えてくれた。
何だろう…
自分がコートに立つより、ドキドキする…
このドキドキは緊張からくる物なのか、
それとも、初めて見る流星のテニス姿に、ときめいているからか…


