ギャラリー達の9割は女の子で、
近付くにつれ聞こえてきた会話には“大ちゃん”と言うワードが飛び交っている。
「大ちゃーん!
キャーこっち向いたー!頑張ってー!」
「あ〜綺麗な顔〜
ジャージ着ても色っぽいよね〜」
「大ちゃんがスポーツするなんて珍しい〜超貴重〜
これは見逃せないね!」
「あれ?
あんた自分の試合は?」
「いーの、棄権するー。大ちゃんが1回戦負けしたら二度とテニス姿見れないもん」
流星が女の子に人気があるのは分かっているから、驚きは一瞬だけですぐに納得した。
納得したけど心配になった。
こんなに注目されて期待されたら、プレッシャーが掛かる。
折角の練習の成果を発揮できないのでは…
だけど、聞こえてきた会話の中に
「一回戦負け」とか、「手加減してくれないかなー」なんて言葉も聞こえるから、
私同様、女の子達も流星の腕前に期待はしてない様で、少しホッとした。
さて、どこから見よう…
そう思い、テニスコートの周りをうろうろしてみた。
フェンスを囲むのは三重の女子の群れ。
入る隙間が見つからない。
どうしよう…
試合開始まで10分あるから余裕だと思ってのに、遅かったみたい。
近くからは無理。
これなら、校舎2階の窓から見た方がいいかも。
そう判断し、テニスコートに背を向けた時、
「紫ちゃーん!」と瑞希君の声がした。
見ると、校舎側から彼が駆け寄ってくる。
「捜しちゃったじゃん。迎えに行くからって言ったのに、忘れたの?」
「あっ…ごめん」
瑞希君は「もう」と言って、可愛らしく頬を膨らませると、
いきなり私を横抱きに抱え上げ、走り出した。
校舎の中に駆け込んだ彼は、驚く私を1階女子トイレに押し込んだ。
「瑞希君!? 何で?
流星の試合始まっちゃうよ?」
「だから急いでんの。
はい、これに着替えてね」
「これ…ええ!?
やだよ、瑞希君が着ればいいじゃない!」
押し付けられた服は、去年の体育祭で瑞希君が着ていたチアガールの衣装。


