しかし、そこには紫ちゃんの姿はなく、鞄やコートまでなかった。
毎日一緒に帰っているのに、一人で先に帰るとは考えられない。
おかしい…
そう思っていると、大ちゃんのスマホが短くなった。
紫ちゃんからのメールで、
『友達と話し込んでいるから先に帰って。
寮まで友達が送ってくれるし、心配いらない』
という内容だった。
友達…?
スマホから目線を上げ教室内を見ると、
紫ちゃんの仲良し女子2人は、今目の前にいて、男子生徒と談笑している。
すぐに大ちゃんが電話をかけたが繋がらず、嫌な予感に顔を見合わせた。
慌てて校内中を手分けして探し回ったら、3階の一番奥の空き教室から紫ちゃんの声が聞こえてきた。
大ちゃんにその場所を素早くメールし、ドアを数センチ開け、そっと中の様子を伺う。
机と椅子が全て後ろに下げられた広いスペースに、紫ちゃんが椅子に座らされていた。
そして、彼女を取り囲む様に立っている7人の女子…
僕の予測は、大ちゃんのコアなファンの子が、紫ちゃんに嫉妬して、吊るし上げなんじゃないかって…
その予想が外れている事はすぐに分かった。
紫ちゃんが何かを説明していて、
周りの女子達は
「そっかー!」とか、
「はい、先生質問でーす!」とか…
笑い声まで聞こえ、何だか楽しそう…
何やってんの…?
ドアにくっつきながら首を傾げた時、大ちゃんが走ってやってきた。
焦る大ちゃんに、取り合えずリンチの類いじゃないことを説明して安心させ、
2人でガラリと扉を開けた。
心配して校内中を駆け回った僕らに、紫ちゃんは、
「あれ?帰っていいってメールしたのに何で?」
と呆れる事を言ってくれる。
溜息をついてから
「何してたの?」と聞くと、
彼女は急に頬を赤らめ、もじもじしながら
「恋話…」
と一言答えた。


