私がそう言うと流星は、
「そこまで考えてやれなかった…ごめん…」
と言ってくれて、
転倒など何かあった時すぐに気付ける様に、
流星の隣の109号室に私の荷物を移動してくれた。
109号室に入ると、ベットや机などを210号室と同じ様に配置してあった。
小物類も大体同じ位置に収納してくれている。
流星が言う。
「一応今までと同じ様にしてみたけど、配置換えしたい物はある?」
「う〜ん、何が使い難いか生活してみないとまだ分からないから、今はこれでいいかな。
後でお願いするかも」
「ん。いつでも言って」
狭い部屋の中は手摺りを付けられる場所もなく、
机に掴まったりベットに掴まったりしながら移動するしかない。
自分の部屋だし、這うように進んでもいいわけで、それは問題ないと思う。
柏寮に戻る事は喜びであると同時に、少し不安でもあった。
でも、みんなが手摺りを付けてくれたお陰で、生活していく自信が湧いてきた。
嬉しくて自分の部屋を見た後また廊下に出て、手摺りに掴まり歩いてみた。
2階へと続く階段の前まで歩き、上を見上げて立ち止まった。
1ヶ月前に、ここを落ちたんだ……
左横の壁を見ると、矢が刺さった小さな穴が、塞がれることなくまだ開いていた。
そうだ…私の右腕の傷……
大樹が弓を持ち出した事を伏せ、落ちる時に釘に引っ掛けたせいだと言ってくれたのは誰だろう?
そう思って流星に聞いてみると、
「瑞希だよ」と教えてくれた。
瑞希君を呼び寄せ、深々と頭を下げた。
「え? あ〜アレね。
紫ちゃんならきっと、大樹君を守るだろうと思ってね。
『この傷の原因は釘な訳がない』
なんて言われたらどーしよーかと思ったけど、意外とバレなかった。
医者って結構適当だねー。アハハハッ!」
瑞希君はそんなに大した事はしていないと、わざと茶化して笑っている。
彼がしてくれた事はこの嘘だけではない。
私が意識を取り戻すまでの間、
廃人の様になってしまった大樹の面倒を見てくれたのも瑞希君だった。


