周りを見ると彼女だけじゃなく、
寮の全員が心配そうな顔して俺を見ていた。
亀さんが携帯電話を耳に当て、俺の方を気にしながら誰かと通話していた。
「気付いたので…はい…
大丈夫だと言ってますから、暫く様子を見たいと思います。
…はい…すいませんでした」
どうやら救急車を呼ぼうとしていたみたいで、間一髪の所で病院に運ばれずに済んだらしい。
ぼんやりとする頭で状況把握に努めた。
紫を押し倒し、紫水晶の指輪を確かめたんだよな……
それから…
そうだ…あの夏が一気に蘇り、脳が耐え切れずに気を失ったんだ……
「どのくらいの時間気絶してた?」
と聞くと、
瑞希が
「5分くらい」と答えた。
5分か…
5分であの夏の丸々1ヶ月分の出来事を、脳内で再現していたのか。
どうりで疲れる筈だ。
頭痛は消え去っていたが、
難解な本を長時間読み続けた後の様に、脳に怠さを感じていた。
疲れていても、今は呑気に寝ている場合じゃない。
紫と話さなければならない事が沢山あるんだ。
ベット上で体を起こして壁に寄り掛かり、深呼吸してから皆の顔を順番に見て行った。
紫は潤んだ瞳で不安げに俺を見ていた。
亀さんとたく丸さんは、説明を求める様な表情をしている。
瑞希は真顔で、俺が口を開くのをただ静かに待っていた。
動揺が見られない所を見ると、瑞希は多分知っていたんだろうな。
紫のおかしな様子に気付き、彼女から過去の話しを聞き出しているんだろう。
教えてくれなかった事を責めるつもりはない。
紫に口止めされていたんだろうから。
最近の瑞希がやたらとイライラして突っ掛かってきた理由が、ようやく分かった。
巻き込んで悪かったな…


