ラベンダーと星空の約束

 


これは6年前に僕と同じ病名で他界した、母さんの形見の指輪だった。



父さんが婚約指輪として母さんに贈った物だと聞いている。



母さんの一番好きな色は紫色だった。



父さんにしたら、紫色は母さんの色なんだろうけど、僕にしたら紫色は彼女の色。



この指輪を渡したのは、彼女に相応しい色をしていたからだけじゃない。



これを見る度、僕を思い出してくれる事を期待していたんだ。



本物の宝石が付いた指輪に彼女は驚き

「貰えない」と断ってきた。




「じゃあこうしよう。これを預かっていて?

次に会う時まで、無くさず大切に持っていてよ。

それならいいだろ?」




彼女はそれで納得し、指輪を手の中に握りしめ、僕の好きな眩しい笑顔を見せてくれた。






――――― 紫…

全て思い出したよ…



あの夏の豊かな色彩も…

香りも音も…

柔らかな君の唇の感触も…

大切な約束も…



失った夏を、今やっと取り戻したよ…




待たせ続けてごめん。

連絡のない俺を、君はずっと待っていてくれたんだね。


生死さえ分からず、随分と悲しい思いをさせたんだろうな。



それでも君は、俺を見つけ出してくれた。



ありがとう。

逢いに来てくれてありがとう。



もう君を離せないよ。

大樹に譲るなんて…
絶対に出来ない。





「流ー星ー あーそーぼ!」




懐かしい幼い君の声が聴こえる。


可愛らしくて明るい…
日だまりの様な声……



「流……流星……」



あ…れ…
俺を呼ぶのは、子供の頃の君じゃ…ない…?




「流……流星……流星っ!
流星っ!!」




悲痛な声で名前を叫ばれパッと目を開くと、

仰向けにベットに寝ている事に気付いた。



目の前には涙目の紫がいて、
俺の体を揺さ振りながら顔を覗き込んでいる。




「あ… 
俺……どうしたんだ…?」



「流星! 良かった!

気を失っていたんだよ。
気分悪くない?頭痛くない?大丈夫?」



「大丈夫…だと思う…」