次の日…東京へ帰る前日の夜も、白樺の木の前で待ち合わせていた。
これが本当に最後。
暫くは会えない…
彼女は「流ー星ー!」といつものように駆けてくると、
僕の隣に座り、
葉書より一回り小さい、電車の乗車カードサイズの、写真のような物を僕にくれた。
「このメッセージカード、流星にあげる。
この写真はね、お父さんと一緒に私が写したんだよ。綺麗でしょ?」
それは夜の風景写真の様だが、暗がりでは見え難いので、ライトアップされたラベンダーの側に持っていった。
薄明かりの中で見たその写真は…
今、目の前に広がっている風景写真だった。
闇の中で青色のライトに照らされ、ぼんやりと浮かび上がるラベンダーの丘。
その上には幻想的な星空が……
でもその星空は、今見ている物と少し違っていた。
特殊な技法で撮影したみたいで、
無数の星が点ではなく、線として写っていた。
まるで流れ星の様に見える色取りどりの星の光跡が、
ラベンダー畑に降り注いでいて美しかった。
「この写真、すごく綺麗だね。
ラベンダー畑に降り注ぐ流れ星か……まるで僕達みたいだ」
「 僕達…?」
「ラベンダーは紫だろ?
君の名前、“紫(ムラサキ)”って書くんだもの。
僕の名前は流星。
流れ星だよ。 ね?」
「あっ 本当だ!!
これって、紫と流星だ。
すごーい!!」
「アハハッ! 気付かずに僕にくれたんだ」
「 うっ ……」
『紫』と『流星』
僕達を象徴する様な写真。
メッセージカードと言われたので裏返すと、可愛らしい丸い字体で短い言葉が書かれていた。
『 待ってるね
紫 』
沢山の言葉を綴られるより、シンプルなこのメッセージは、より強く僕の心に響いた。
君が待っていてくれるなら、
手術を乗り越えられる気がするよ。
そして必ず戻るから……
待っていて…
僕を忘れないで……
「僕も紫にプレゼントがあるんだ」
ズボンのポケットから取り出し、彼女の手の平に乗せた物は、
紫水晶の小さな石の付いた金色の指輪。


