強いな……
彼女は強く凛として…それでいて、優しさと女の子らしい愛らしさを兼ね備えている。
“紫”…いい名前を付けてもらったね。
ラベンダー色のこの名前は
君に相応しい。
極寒の大地で雪に埋もれても、
次の初夏にはまた大地を紫色に染め上げる。
君は…強くて優しい香りの漂う、ラベンダーみたいな女の子。
手術を終えて動けるようになるのは、どれくらい先の話しになるかな。
この大地が銀世界に変わる頃、
走る事のできる体になっているだろうか……
そうであって欲しい。
来年の夏、もう一度この景色を見ていたい。
君と一緒に……
あの夏の物語が終盤に近付くにつれ、
子供の頃の意識の合間に、現在の自分の意識がちらほらと顔を覗かせる。
夢の中で幼い彼女を見つめながら、現在の俺が考えている。
約束はしない方がいいんじゃないかと。
1回目の心臓手術で忘れてしまうから……
心配させながら、彼女を待たせ続けてしまうから……
約束はしない方が……
しかし、そんな俺の意識を無視して子供の俺が口を開き、守れない約束をしてしまった。
過ぎたあの夏は変えられないから、当たり前かも知れないが……
「手術が成功したら…
ここに戻ってきてもいい?
紫とこの大地で生きてみたいんだ…」
「うん…待ってる。
ずっと待ってるから…だから絶対に戻ってきてね?絶対だよ?」
「約束する。動けるようになったら、一番に君に会いに来る。
もう一度、紫とこの景色を見たいんだ…
あのさ…えーと……
目…瞑って貰えるかな…」
「ん? うん。
−−−− !!!」
ほんの一瞬だけ触れた彼女の唇は、柔らかく優しい香りがした。
彼女は驚いた様に目を丸くして…
頬を染めてはにかみ…
嬉しそうに微笑んだ。
――――― そうだ…
この時が俺達のファーストキスだったんだ。
高校の食堂裏でしたキスは、セカンドキスだったのか。
柔らかい君の唇の感触は、
あの時も今も変わっていないんだな……――――


