「大文字…大きな文字って書いて…大文字…
似合わないから、余り言いたくなかったけど…」
言い難そうにそう言うと、
彼女は大きな瞳をパチパチさせた後、少し考えてからこう答えた。
「大文字って、大魔神みたいに聞こえるからカッコイイ名字だよね!」
大魔神?
それだと益々ひ弱な僕のイメージから離れて、もっと恥ずかしい…
でも僕は、彼女の言葉に吹き出し大笑いした。
大文字と大魔神。
ダジャレになっている様な…なっていない様な…
下手くそなダジャレセンスに可笑しさが込み上げると同時に、嬉しくも感じた。
「言いたくなかった」
なんて言ったから、
気を遣って一生懸命考えてくれたんだろう。
温かい彼女の気持ちが嬉しかった。
笑い続ける僕を見て初めはキョトンとしていた彼女だが、やがて釣られた様に一緒に声を上げて笑ってくれた。
陽射しを避け木陰にいるのに、彼女の笑顔は太陽みたいに眩しく輝いて、
キラキラとした光の粒子が心に降り注いだ。
愛らしい顔立ち、
パッチリとした二重瞼。
艶やかな肩までの黒髪に、
同じ様に漆黒の澄んだ瞳。
出会ったばかりの彼女に強く惹かれた。
眩しい笑顔と漆黒の綺麗な瞳、
それから優しい心に……
彼女がこの観光農園の娘だと知り、彼女に会うことを期待して毎日ここに足を運んだ。
彼女は僕の姿を見ると
嬉しそうに駆け寄ってくれた。
その内、白樺並木で待ち合わせるのが当たり前になり、
雨が降らない限り、そこで一緒に過ごすようになった。


