「なんだよー。人数増えないで減らしてどうすんだよ。紫のバーカ!」
「姉ちゃんはバカじゃないよ?
この前の算数のテスト100点だったもん。大樹は3点だったけど」
「青空、てめぇはどっちの味方だ?」
大樹と呼ばれた野球帽の少年と、青空と呼ばれた小さな男の子は、
言い争いをしながら駐車場の向こうへ去って行った。
一人残った少女は僕の隣に体育座りをし、申し訳なさそうにこっちを見ていた。
「誘っておいて、どっか行っちゃってごめんね?」
「いや、気にしてないよ。
君も僕に遠慮しないで、あの子達と遊んできていいんだよ?」
「ここに居たら迷惑?
本を読むのに私は邪魔?」
「本はいつでも読めるから邪魔でも迷惑でもないよ。
ただ君が僕に気を遣って、遊びたいのを我慢してるんじゃないかと…」
「ここに居たいの。我慢はしてないよ。
ねぇ、名前何て言うの?
私は月岡紫。“紫(ムラサキ)”って書いて“ゆかり”」
「へぇ、珍しい読みだね。
当て字?」
「多分。でも他にも同じ名前の人が沢山いるって、お父さんが言ってた」
「そうなんだ、知らなかったよ。
僕は流星。流れ星と書くんだ」
「流星、いい名前だね。
名字は?」
「えーと…」
名字を言うのが恥ずかしく
言い澱んだ。
僕の名字は
“大文字(ダイモンジ)”
重量感あるその名字は、
体が細く色白で、ひ弱な僕には似合わない。


