でも仕方ないから一人で行くよ。
真由も千絵梨も今日はデートだと言ってたから、頼めないし。
失礼な頼みをしたことに謝り、
トボトボと自室へ引き上げようとした時、
「待って」と呼び止められた。
「やっぱ一緒に行く」
「え? でも…」
「紫ちゃんが一人で人混みって危ないから」
「危ない? 流石に迷子にはならないと思うよ?
迷ったら誰かに聞くし」
「違うよ。ナンパとか怪しいスカウトとか、そういう心配。
君って一々マジメに対応しちゃいそうだからさ」
「それは大丈夫だよ。
きちんと断るもの」
「ほら、言わんこっちゃない。きちんと断ったらダメ。
話し掛けてくるのに答えたら最後、相手のペースに持ち込まれるから。
あーゆーのは無視して足速に立ち去るのが一番なんだよ」
「そうなんだ」
「連れていってあげるよ。
何処に行っていいかも分からないんでしょ?
テスト終わったら教室で待ってて、迎えに行くから。
あっ…やっぱ迎えに来て?」
「迎え? 瑞希君のクラスに?」
「そう。2階まで来るの面倒臭い?」
「そんなことないよ。
じゃあテスト終わったら瑞希君のクラスに行くね?
付き合ってくれてありがとう!」
何だかんだ言っても瑞希君は優しい。
良く気が利くしお世話になりっ放しだ。
しっかり者で頼りがいがあって、サッパリとした気持ちのいい性格なのに、
彼女絶賛募集中の彼の周囲の女の子には恋愛感情はない。
何故かと考える必要もなく、
その原因は女装癖。