掛ける言葉なんて見つからなかった。
口を開けば、陳腐な謝罪の言葉しか出てこないだろう。
軽はずみな行為をしてしまった事を後悔し、震えながら立ち尽くしていた。
流星が立ち上がる。
私の背後に回り背中のファスナーを上げてくれた。
それから部屋の鍵を外し
ドアを開けた。
「3時間経ったから、行っていいよ……
後夜祭に出るなら、俺はサボるって瑞希に言っといて?
今のことは……
忘れよう。お互いの為に……」
「う…ん…」
流星の部屋を出て、
ゆっくりと階段を上がり自室へ戻った。
夕暮れの親密な光りはすっかり消え失せ、部屋の中は薄暗く、少し肌寒かった。
電気も点けず暗がりの中で、
メイド服から暖かい部屋着に着替えをした。
窓から外を見ると、
校庭の向こうに明かりの灯った校舎が見える。
後夜祭は体育館で行われている筈。
一年生の私にとって初めてのことだから、後夜祭で何をするかは分からない。
参加してみようと思っていたけど、今は学校に戻る気になれなかった。
私と流星は後夜祭に参加しないと、瑞希君に短いメールを送った。
すぐに返信があって…
『了〜解! 僕達あと2時間は帰んないから楽しんで〜!』
溜息しか出ない文面が送られてきた。
瑞希君も、亀さんも、たく丸さんも…
流星が好きだから、
きっと彼の希望を叶えてあげたいと思っているのだろう。


