柏の木は枝の隅々まで厚く氷雪を纏い、
白いお化けが獲物を追い掛け、触手を伸ばしている様に見える。
「あっ 樹氷(ジュヒョウ)だ!
あの形面白いね。カメラ持ってくれば良かった」
私の趣味は風景写真を撮ること。
いや、趣味とはちょっと違うかな…
これも観光農園の跡取りとしての努めなんだ。
うちの店で販売するポストカードやカレンダーの写真は、私と父が撮影していた。
色彩豊かな夏はもちろんだけど、冬のフラノも美しいと知って貰いたい。
だから私と父は雪の写真もよく写しに出掛ける。
−30℃の中、ダイヤモンドダストを写すために、朝日を待っていた時は凍死するかと思ったけど…
樹氷を見ながら写真を撮りたいなんて言っていると、大樹にからかわれる。
「お前、今日合格発表だろ?
樹氷に気を取られるなんて余裕だなー。さすが秀才紫さん。」
余裕なんて全然ない。
心はソワソワドキドキ落ち着かない。
そんな私の気持ちを弟が余計な言葉で代弁してくれた。
「姉ちゃんに余裕は無いよ。
今朝だって父さんの歯ブラシで歯磨きしようとしてたし、すっげー変」
「青空!余計なこと言ったら怒るからね」
大樹が期待の篭る目で私を見る。
「ふーん…
もしかして自信ねぇの?落ちたと思うのか?」
「何で嬉しそうな顔でそんな事言うのよ!
きっと受かってるよ。あんなに勉強したんだもん。
自信はあるに決まってるでしょ?」
「チッ…自信あんのかよ…」
入試に手応えはあった。
間違いなく合格はしている。
ただ…特待生枠のトップかどうかは自信がなかった。


