ラベンダーと星空の約束

 


上靴のまま玄関を通り抜け学校を飛び出した流星は、柏寮に向けてひた走る。



首にしがみつきながら
感じるのは……

彼の微かな汗の香りと
温かな体温。

それから…速い息遣い。



久しぶりに感じる流星の温もりに、
心臓が壊れそうな程スピードを上げていく。



戸惑いもあるけど、
それとは裏腹に、何かを期待する気持ちもムクムク湧き起こる。



地面を蹴る規則的で速い走りのリズムが、私の体に心地好く振動する。



そのリズムに浸っていると、
徐々にそれが、今 流星の中で動いている、移植された心臓のリズムに思えてきた。



運動することを
避けてきた流星…

走っても中々上がらない心拍に違和感を感じ、

移植された心臓から
「お前の物じゃない」と拒否されてる気がすると言っていた流星…



全力で走っている今の心拍も、
やっぱり遅いのだろうか…?



それを確かめたくて、
頸動脈付近にそっと指を当てると、ドクドクと速い脈圧を感じた。



そんな私の行動に気付き、
流星はハァハァと息を切らしながら、笑って言った。




「大丈夫。これ以上ないくらい、心臓バクバク言ってるから。


気持ちいい…この速い心拍が気持ちいい……


思い通りにリズムを変えてくれるこの心臓は…
龍さんの物でも…元の持ち主の物でもない。

この心臓は…
確かに俺の物だよ…


そう思えるのは、
ゆかりちゃんが傍にいる時だけなんだ」