ショートパンツのポケットからスマホが飛び出し、ゴトンと音を立て床に落ちた。
起き上がろうとするより早く、大樹の大きな体が跨がってきて、
両手首をベットに押さえ付けられた。
至近距離にパンツ一枚の大樹の裸体と、怒りに満ちた瞳が見える。
「大樹!止めてよ!」
「止めて欲しかったら答えろ。その痣は何だ?」
「…ただの…虫刺され…」
「てめぇ…… 嘘つくならもっとマシな嘘つきやがれ!」
「あっ! ヤメッ…」
大樹は私の手首を離すと、Tシャツの衿元を掴み力一杯引き裂いた。
ビリビリッと布の裂ける音が狭い室内に響き渡る。
空模様はまた本降りの様相を呈していた。
稲光が走り、薄暗い室内が一瞬だけ明るく照らし出された。
遠くの方に雷が落ちた音がした。
落雷の後にはザーザーと勢いを増す雨音と、
裏の倉庫で整備中の、ジャガイモ収穫機のエンジン音が小さく聞こえていた。
大樹と私の間には、今まで味わった事のない緊迫感が生まれていた。
「虫刺され…?
刺された穴がねぇな……どう見てもキスマークじゃねーか……
紫…流星とやってんのか?
まだ付き合ってもいねぇのに…お前はそんなに軽い女だったのか?」
「やって…ない…」
「嘘付くんじゃねぇよ!!」
「嘘じゃない!!
流星とは……キスはした。キスマークも付けられれた。
でも、それだけだよ!それ以上はしてないから!」
私の頭の両サイドに腕を突き立て、大樹はジッと見下ろしてくる。
その瞳は怒りと悲しみと怖れと…
負の感情がごちゃまぜになった、居た堪れない色をしていた。


