この『静』の数秒間、
何を考えているのかと、以前大樹に聞いた事があった。
その表情からは無心と言う言葉が浮かんでくるが、
大樹は何かを考えていると答えた。
何かを考えていた筈だけど、終わってしばらくしてからそんな質問をされても思い出せねぇと……
それならこの一手を終えた直後に聞いてみれば、
何を考えていたのか分かるかも知れない。
大樹の手から矢が放たれ、弓を下ろすのを待ってから声を掛けた。
「大樹、的を見て静止してる間何考えてた?」
「お前…前も同じ事聞かなかったか?」
「うん聞いた。あの時は『分かんねぇ』て言ってたよね。
今は?直後の今なら分かるでしょ?」
「………… お前の事…」
「私の事?
私のどんな事?」
「紫と流星の事。それと…俺と紫の事。
…紫…今度お前に言いたい事がある」
「今度?
何で今言わないの?」
「………」
私の質問に大樹は答えなかった。
答えない代わりに少しだけ笑みを返してくれたけど…
その笑い方はぎこちない。


